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最高裁判所第三小法廷 昭和32(オ)685 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人江川甚一郎の上告理由第一点について。

論旨は、手形振出人たる法人の肩書には、その所在地を正確に記載しなければ、

法人の存在を特定し、これを認識すること不可能であるところ、所論約束手形にお

いて、その振出人たる所論有限会社は、その肩書に所在地でない場所を記載してあ

るから、実在しない架空のものとなるにも拘らず、原審がその架空を否定したのは

違法であると主張する如くである。

しかし、原審は、証拠により、被上告人を代表とする所論有限会社が実在のもの

であることを認定して居り、その認定は是認し得られるのであつて、右手形の振出

人たる所論有限会社の肩書地がその所在の場所でなかつたとしても、所論会社が架

空のものとなるべき根拠を見出し得ない。

論旨は結局、原審の適法になした事実認定を非難するに帰するのであつて、これ

を採用し得ない。

同第二点について。

論旨は、原審が、右手形の振出人たる所論有限会社の肩書地を誤記であると認定

しながら、これを記載したその代表者たる被上告人に過失がないと判断し、右手形

の振出人たる同有限会社にその所在地でない場所を肩書し、これによつて上告人に

損害を被らしめた同会社代表者たる被上告人の責任の有無を判断しなかつたのは、

民訴一八五条に違反すると主張する。

原判文はその措辞必ずしも妥当といえないけれども、要するに原審は、証拠によ

り、所論約束手形の振出人たる所論有限会社が実在のものであり、上告人が同会社

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の所在地を知り得なかつたのは、上告人の調査粗漏にも因るものであることを認定

し、かつ、右手形に記載せられた振出人たる同有限会社の肩書地は、同有限会社の

所在地ではないけれども、振出人の肩書地は手形の記載要件でなく、従つて手形に

記載せられた振出人の肩書地が真実に合して居らなくても、手形を無効とするもの

でないから、同有限会社の所論約束手形上の義務の履行を訴求し得られるのであつ

て、粗漏のため右手形上の権利を行使し得なかつた結果、上告会社が損害を被つた

としても、これを右有限会社の代表者たる上告人の故意過失によるものとはなしえ

ない旨判断して居るに外ならない。右認定は是認し得られ、右判断は正当である。

原判決に所論の違法はない。

論旨は採用し得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のと

おり判決する。

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 石 坂 修 一

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 高 橋 潔

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